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*−朗読用−*

No.1『空の郵便屋さん』
空の郵便屋さん

知ってる?空の上に郵便屋さんがいるって。
けど、この郵便屋さん。届けるのは手紙じゃないんだよ。
届けるのは、貴方の思い。
ほら、青い空を見上げてごらん。そこに彼等はいるから。




青い空に、白い雲。風がなびき、白い雲は出発する。
見渡す限り青い空を航海する旅に、白い雲は出発するんだ。
僕はその白い雲の船に乗って、青い空をどこまでもどこまでも。
世界の果てまで、あの人の思いを君まで運ぶよ。
君がどこにいたって。思いを乗せる人がどこにいたって。
大丈夫。
僕は空を自由に飛びまわれるんだ。嵐にだって遭うことはあるけれど、そんなのどうってことないよ。
大丈夫。
このどこまでも続く青い空があれば。
青い空に浮かぶ白い船に思いを託してくれる人がいるなら。
大丈夫。
最後に、届けた思いに笑ってくれたら、僕はもう最高だよ。

だから……

青い空に届けよう。

あの人への、思いを乗せて。

青い空を見上げて。

青い空で思い出して。

君に思いを寄せる人を。

大丈夫。
僕はいつだって君達を白い船から見てるよ。
思いを伝えるために。
思いを、あの人に。
ほら、君からもあの人に。
思いを青い空へ託してみて。きっと届くよ。

青い空に届けてみて。
あの人へ思いを届けるように。




空の郵便屋さんに思いを乗せて。届いたかな?
きっと受け取ってもらえたはず。
今度は返信を待とう。空を見上げて。
今日も青い空が広がっている。











No.2『帰り道』
帰り道

夕闇に照らされて、影と一緒に私は歩く。
隣の子の影と、私の影が手を繋いで、ゆっくりと縦長に伸びていく。
本当にゆっくりとゆっくりと。
太陽が沈む速さで、影はひっそりと伸びていく。

目の前には赤く暗い色が広がり、もうすぐ夜なのだと告げていく。
そう、もうすぐ彼ともお別れなのだと。
毎日毎日繋ぐ、彼の手の暖かさ。
それが当たり前の私だった過去の私。
それが嬉しくて、暖かいものだったなんて、まったく考えてなかった過去の私。

影はもう一つ。
夕闇に溶けてなくなってしまいそうな影が一つ、佇んで。
いないはずの隣に手を伸ばし、立ち止まる。
立ち止まって、空を見上げた。
もう、つきの光がゆっくりと私を照らして、星が輝く時間。
いつの間にか、私の影も消えていた。闇の中に。

再び歩き出し、暗い道を帰路に着く。
一人で。
外灯の明かりが、私を照らし影はゆっくりと顔を出す。
もう、隣にいない影を思い出し、私は外灯の下から抜け出した。
もう暗い。
だから、影はない。一つもないはず。

帰り道。夕闇に包まれるたびに思い出す。
二つあった影と、たった一つ残していった手の温もりを。











No.3『春』


肌を突き刺す冷たい風が和らいで、幾日か時が経つ。
土からは、緑が生き生きと顔を出した。
そんなある日、出会った。

君と。

君は、僕の前に立ち、舞い踊る。
綺麗で華やかで、目を奪われる僕。
君は足取り軽く、僕の前を行き交った。

次の日も

次の日も


君は踊る。

僕は朝も昼も夜も君に瞳を奪われる。
惹き付ける力は、まさに魔性。
魅惑そのもの。

だけど、僕は知っている。

君との別れを


暖かくなる季節には、必ず君に出会えるけれど。
暑くなる季節には、君と別れる日が来ると。

僕は知っている。

知っているからこそ、僕は優雅に踊る君を見る。

淡い桃色。

それは君が織りだす色。
だから、君の名が入って

桜色。

君との別れは忍びないけれど。
だけど僕は待つ。

また寒い季節が過ぎ、暖かくなって君と出会える日を。

僕は待つよ。

そしたらまた僕は君を瞳の中に入れるんだ。
別れは寂しいだけじゃない。待つ楽しさがあるから、

僕は待つよ。











No.4『外灯』
外灯

帰り道、ふと足を止めてみた。
もう日は沈み、辺りは暗い。
冷たい風が頬を撫ぜる。

「明るいな。」

今日は冬至だというのに……。
そう思った。
目に移るのは、街の中で光る街灯。
白い息を吐いて、俺はまた歩き出す。
黄色の淡い色が前から後ろへと、いくつも通りすぎて行った。
この灯りは、夜の暗闇と星の明るさを奪って行く。
空を見上げても、明るく照らし出された夜空には、星が見えない。
月光りでさえ、街灯の明かりの前では霞んでしまう。

「……ふっ。」

家に近付いて、つい笑ってしまった。

家の前にある外灯が見え、ホッとした自分に対して。

さっきまであんなに明るいと思っていた街灯も、振り返ると霞みがかかりどこか暖かい。

月が無くても

星が見えなくても

暗闇の中で

街灯は帰ってくる人を優しく道案内してくれる。
外灯は待つ人がいる家を教えてくれる。

人が作る光りだからこそ、人の暖かみを感じることができるのか。

「ただいま。」

外灯も通り過ぎ、家庭という灯りがともる。











No.5『影』
影。


僕と君の影は、重なって、ある一箇所だけ濃くなってるんだ。
歩いてる時、すれ違う時、互いに背中を向けてる時。一瞬、もしくは長い時間。僕と君の影は交わってるんだよ。
それに君は気付いてる?


知ってた。


君が決して影なんてものを見ないことを。
自分の足元に這いつくばって、君を追いかけてる影なんて、君が見ないことを。


僕は知っていた。


やっぱり合わないんだよ。だって、君は気付かない。
嫌いだと、合わないと言ってる半面で。実は凄く相手を気にしていることを。
君は気付かない。

影だけが……。

君の影だけがそれに気付いてるんだ。

だから


僕も影だけでしか気付かないフリをしてるんだ。



僕と君は合わない。



唯一影だけを残して。